東京散歩|両国編
2023年3月17日
ずっと一番好きな北斎の浮世絵作品は『神奈川沖浪裏』だった。
あの無数の白い花を咲かせた波の先端が、まるで多くの小さな手が薄っぺらい小舟を奪い去ろうとしているかのように生き生きとしているから。
これは、北斎が一生をかけて描き続け、年老いてようやくプルシアンブルーに出会い、キャンバスの上で江戸の海と空の喜びを自由に表現できるようになった狂喜が見えるような気がさせてくれた。
しかし今日、北斎美術館で『山下白雨』という作品を見た。一気に私の最も好きな北斎作品へと躍り出た。
『山下白雨』では、山の麓は暗雲が立ち込め、雷が鳴り響いているのに、富士山の頂上は雲と雨を突き抜けて、晴れた空に聳え立っている。
限られたキャンバスの上で、富士山の雄大さを表現するために、北斎は天気を対比として使い、立体的な高さを引き立てている。
良い作品には、このような工夫がいたるところに存在しているようだ。文学、写真、絵画、音楽、それぞれが独自の方法を持っている。
心の中の想像を、手元の道具で実現できる人。どの時代に置いても、最も優れた人なのだと思う。
